緊張型頭痛
毎日新聞 平成12年5月20日掲載「ホームドクター相談室」より
- コンピューター部門におり、終日文字とにらめっこの生活でこの3年間、毎日午後になると後頭部から頭全体にわたって締め付けられるような痛みが起きます。脳腫瘍ではないかと心配で内科を受診したところ、異常はなく、目を酷使したための緊張性頭痛と診断されました。そういうことことがあるのでしょうか。(35歳女性)
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ご質問の内容から、精神的ストレスや社会的ストレスにさらされている日常とお察しします。このような環境下では、頭痛が「頭痛の種」となることは想像に難くありません。特にコンピュータの画面を長時間見つづける人によくみられる症状はVDT(コンピューター端末)症候群と呼ばれており、主に頭痛、肩こり、眼精疲労が見られます。
このように頭全体が締め付けられるようなタイプの頭痛は緊張型頭痛と考えられます。以前は筋緊張性頭痛と言われていましたが、筋肉の緊張のみならず精神的緊張もその原因となることから、最近は緊張型頭痛と呼ぶことになりました。頭痛の8割近くがこの緊張型頭痛と言われており、やや女性に多いようです。
緊張型頭痛は肩こりを伴っていることが多く、さらに進んだ状態で頭の周りの筋肉が締まる結果頭痛が生じます。痛みが起こっている時には例外なくうつむき姿勢になっており、この時、首の後の筋肉が収縮して血液の流れが悪くなり、さらに筋肉の強い収縮となって痛みとして感じるわけです。
しかしすべての人がうつむけば頭痛を生じるわけではありません。頭痛を生じやすい因子があり、以下のような人に起こりやすいと言われています。
まず第一に首が長く、ほっそりした体形が問題になります。なで肩で首の細い着物美人タイプの女性は、見かけはよくとも頭痛に悩まされる運命にあると言え、この頭痛が女性に多いことも納得できます。
次に首の骨(頚椎)の並び方も重要で、生まれつきまっすぐな頚椎の持ち主や、頚椎や椎間板に異常のある人は首の筋肉に負担がかかり、頭痛もちという結果になります。
三番目にストレスの多い場合は血管が収縮しやすくなっているために、首の筋肉の血流が減少し、その結果痛みが生じやすくなっています。精神的ストレスでも頭痛が生じるメカニズムがここにあります。緊張型頭痛は一種の生活習慣病ですので、ライフスタイルや環境を変えることが大切です。いかにストレスをうまくコントロールして、精神や肉体をリラックスさせるかということです。根をつめる仕事には規則的な休憩をはさみ、時にはストレッチ体操や散歩などの運動を取り入れるのも大事です。またうつむき姿勢になりやすいデスクワークやコンピューター作業をする場合は、姿勢にも気をつけて下さい。頭痛が起きた時は、こった筋肉をリラックスさせるために入浴やマッサージ、指圧が有効で、蒸しタオルをあてるというのも効果があります。
頭痛が起きた時には、まず危険な頭痛かどうか、どのタイプの頭痛かを専門医(神経内科や脳外科)のアドバイスを受けた上で治療や予防に努めるということは言うまでもありません。
井内科クリニック 井 重博