頭や手足が震える
熊日新聞 平成12年7月25日掲載「何でもきいてきになる病気」より
- 自分では気付かないのですが、子や孫に「また頭ふりよるよ」と言われます。気になって人がいるところには行けず、家にこもりきりになり困っています。(73歳、無職・女性)
- 1年前から手足が震えるようになりました。特に右手がひどく震えます。今のところ字を書いたり、食事をすることはできますが、気になってなりません。(76歳、無職・男性)
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-震えにはどんな種類がありますか。
震えは、意志に反して体の一部が動く「不随意運動」の一つです。怖いときや緊張したとき、寒いときなどだれでも出ます。
ほとんどの場合は心配いりませんが、中には病気が隠れていることがあります。
震えは医学的に「振戦」と言い、大きく三種類に分けられます。安静にしているときだけ震える「静止時振戦」は、パーキンソン病の初期にみられます。片方の手から始まることが多く、左右の動きに差がみられる傾向があります。徐々に進行し、歩行などが難しくなります。
手を前に出したときなど、ある格好をしたときだけ震えるのが「姿勢時振戦」です。甲状腺(せん)ホルモンを作りすぎるバセドー病や、原因がはっきりしない本態性振戦で起こることがあります。
「企図振戦」はコップで水を飲もうとしたときなど、あることをしようとしたときだけ起こります。小脳性失調症のときにみられ、字を書いたり、はしを持つことが難しくなります。
-お年寄りによくみられる震えは。
高齢になると、筋肉を動かす神経のバランスが悪くなって、震えがでやすくなります。「老人性振戦」といい、頭や両手によく現れます。自分では気付かないことが多いようです。悪化はしませんが、気にすれば気にするほど、出やすくなるという特徴があります。多くのお年寄りにみられますので、心配はいりません。
73歳の方の質問は、頭だけの震えであれば、この「老人性振戦」だと思われます。76歳の方は、左右差があるのでパーキンソン病が疑われますが、字をきちんと書くことができるので、まだ初期と考えられます。
-治療法は。
それぞれのタイプで、震えに関係した神経をコントロールする薬があります。まずはどのタイプかを診断することが大切です。神経内科を受診してみて下さい。
井内科クリニック 井 重博